先日、Vtuber/Vsingerの七篠さよさんからの依頼を受けて
「サヨナラキドリ」という曲を作りました。
2週間で 10,000 回再生突破しました。いや~めでたい。
西森も関わらせていただいた曲の中で最速の到達なのでびっくりしています。
(まぁ、この曲含めて合計2曲なんですが)
めでたいし折角なので、この曲の制作秘話について書き残しておきます。
特に、この曲を作る上で
「何回でも聞ける曲」「聞き続けられる曲」
を目指していたのですが、何か参考になれば幸いです。
ジャンル
当初は西森のオリ曲である「アンダーハート」に近い曲調にしてほしいとのことでした。
かなりダークな感じのアップテンポな曲ですね。
ただ、展開の起伏が激しく今風過ぎるなぁと思ったのと、これぐらいダークな曲を七篠さよさんが歌ってるイメージがあまりつかないという点があり、
これをただただ模倣したら失敗するなという感がありました。
なので、生誕由来から和風を取り入れてみませんか~と提案しました。
和風のリファレンスはこんな感じです。
懐かしさ+切なさ、というエモ和風のコンボセットです。
和風の曲ってなんかずっと聞いていたくなるんですよね。メロディも音階の影響ではっきりしたものが多いし。
日本人の遺伝子に刻み込まれてるような気がするんですが西森だけですかね。
曲構成
この曲の構成は下記となっています。
【イントロ – 1A – 1B – 1サビ – 2A – 2サビ – C – ラスサビ – アウトロ】
通常のポップスからすると【2B抜き】の構成です。
これは「色彩」という曲を参考にしました。
昨今、『夜に駆ける』に代表される【2サビ抜き】ってすごい流行ってるじゃないですか。
あれってインパクトがあるしリスニングも時短になるんですけど、聞いてて繰り返し部分が少ないから常に味の濃いトンカツを食べてる気分になるんですよね。
その点を踏まえて、この曲はいいリファレンスになりました。
2B抜きという斬新な構成で、サビが何回も出てきて安心するんですよね。
1サビから2サビまでわずか17秒しかないんですよ。しかも3分ちょいで終わる。
曲を「また聞こう」って思える要因の1つに「繰り返しがあるかどうか」はかなり重要だと思っていて、普段よりも意識しました。
トランスとか一生聞ける気がするじゃないですか。
それです。
リズム
全体を通してほとんど4つ打ちです。
定石であればBメロにハーフテンポを入れてゆったりした感じにするんですが、今回は採用しませんでした。
Bメロをゆったりにするとメリハリがついていいんですけど、毎回ここでリスニングにつっかかる感じがあったんですよね。
作曲の過程では1番Bメロでハーフテンポにしていたんですが、2番Bメロ部分を1番に持ってきて、2番Bメロを削除しました。
Bメロゆったり版で一番最初に作ってたのがこれです。
これはこれでいい感じなんですけどね。しかしAメロBメロ見る影なさ過ぎて草。
その分、ゆったりしたパートはCメロに全部押し込んだのと、4つ打ちでも要所要所に細かいリズムの変化を入れて飽きさせないよう意識しました。
ベースも終始細かく刻んで、一番勢いの出るオクターブ移動をアウトロで解禁みたいな小技も使ってます。
ちなみに細かいリズム変化は『トウキョウ・シャンディ・ランデヴ』がとても参考になりました。
ツミキ氏はリズムを細かく変化させるの本当にうまいです。
また、この曲にはストーリーがあるんですが、Cメロまではずっと突き進む形にした方が解釈一致になるというのもあります。
メロディ
ものすごく長く続くメロディを採用しました。
サビで言えば息継ぎできる場所が2か所しかないです。七篠さよさんの肺活量にマジ感謝。
さよならが覆す きみは遠ざかる 分かたれた 星高くひらりと浮かぶ <息継ぎ>
さよならだ この映画もエンドロールさながら <息継ぎ> 心を断つ静けさよ
リズムの話に通じるんですが、息継ぎできるように間を活用してキメを作って…ってやると、味は濃いんですけどもうお腹いっぱいって気持ちになっちゃうんですよね。
これは手前味噌ですが『潮騒』という曲を作った時、ロングトーンでめちゃくちゃ間を埋めたときに「すごい安心するな…」と思って、今回はロングトーンじゃない方法で採用しました。
この連続したメロディのことを西森は
「有機性が高い」
とか言うんですけど、こういうメロディが好きです。
音色
これはもうただの性癖なんですが、若干古めの音になってます。
チップチューンの音バリバリ使ってますし、リバーブ多めだし。
そもそも最先端の音を使うという意識が全くないです。
七篠さよさんのリスナーの方から「00年代の美少女ゲーOPっぽい」とか、他の方からは「乙女ゲーOPっぽい」って評価をいただいたのはここら辺が原因かなぁと思ってます。
これかなり良い評価だなと思っていて、なんでかというとOPって何回も耳にする曲だからですね。
あと、まぁちょっと古い印象のある曲ってなんか安心するでしょ(適当)。
でも冗談抜きで、最近の曲はとにかく
「個性!個性!個性!味が濃い!イントロから最強!」
みたいな感じだし音使いもそんな感じだなと思っていて、特徴のある音が目立つんですよね。
最近で最たるものだなと思ったのは『ド屑』と『酔いどれ知らず』ですね。
今回は七篠さよさんのブランドに乗っかる形だったのでそういうのは特に必要ないかなと思って、チップチューンシンセを多様してます。
Lofi流行ってるのってこういう懐かしい音使いっていくらでも聞けるみたいなとこに起因してんじゃないのかなぁなどと妄想してます。
(最先端の音使いに追いつくのは疲れるからなんて口が裂けても言えない)
最近、音使い古めでいい感じだな~と思ったものとして『INTERNET OVERDOSE』がありますね。今は『INTERNET YAMERO』も良い感じ。
歌詞
この曲は七夕伝説に基づいた独自ストーリーで進行します。
七篠さよさんがこの動画で言及してくれています。
西森からこれ以上ストーリーについて語ることはないんですが、こういう考察要素があるとめちゃくちゃ面白いし何回も聴きたくなりませんか?
「歌詞の解釈で曲の印象が変わる」
という評価をいただいた時に思わずニヤリとしました。
西森は基本的に歌詞を全然見ないんですけど、でもたま~に歌詞に注目するとすごい面白いことを言っていて、何回も聴きなおしちゃうことありますよね。
アレです。
アレを狙ってます。
これを実現するために、常套手段ではありますが、歌詞にて直接的な表現を避けることで実現してます。
注目してもらえれば分かるんですけど「何言ってんだこいつ」ってぐらいあいま~いな表現がずっと続きます。
【さよならが覆す】とか【またこのラストシーンだ】とか、ストーリー知らなければ何言ってるか分からないことずっと言ってるんですけど、七篠さよさんに言及していただいたことで解釈する楽しさが出てきて、繰り返し聞いてもらえるかな~って思ってます。
あと細かいこだわりなんですが、
【さよ】
という言葉を要所要所に入れてます。
【さよならだ】【心を断つ静けさよ】【心が駆けてく今朝よ】とか。
西森はVtuberドハマりクソ野郎だから分かるんですが、こういうこだわりってなんか良いっすよね。
最後に
この曲、作り切るまでに3か月かかったし、なんなら大晦日のギリギリまで作業してました。
その分こだわるところに全力でこだわれたし、
「アマチュアが作るこだわり」
を実現できたかな~って思ってます。
なので、全人類、何回でも聞いてください。